倉方ゼミ輪読会について

2012年度前期の建築デザイン研究室・倉方ゼミでは、以下の7文献の輪読会を行います。


本研究室のB4〜M2が対象ですが、本研究室以外の学生・院生の参加も歓迎します。ただし、原則として参加時からすべて出席可能であり、倉方の承諾を得た者とします。希望者はarchidesign08@yahoo.co.jpまで、連絡してください。
スケジュールは下記、水曜日の10:40〜12:10。場所は大阪市立大学工学部棟4階C413の建築デザイン研究室です。


4/18(水) 文献1:ジョン・ラスキンゴシックの本質』(1853・86)(川端康雄訳、みすず書房刊、2011年発行、2,940円)
5/9(水) 文献2:ジェフリー・スコット『人間主義の建築 ― 趣味の歴史をめぐる一考察』(1914)(邉見浩久・坂牛卓監訳、鹿島出版会刊、2011年発行、2,520円)
5/23(水) 文献3:ニコラス・ペヴスナー『モダン・デザインの展開 ― モリスからグロピウスまで』(1936・48)(白石博三訳、みすず書房刊、1957年発行、4,515円)
6/6(水) 文献4:ケヴィン・リンチ都市のイメージ』(1960)(丹下健三・富田玲子訳、岩波書店刊、1968年発行、3,780円)
6/20(水) 文献5:ジェイン・ジェイコブズアメリカ大都市の生と死』(1961)(山形浩生訳、鹿島出版会刊、2010年発行、3,465円)、(倉方塾 平瀬有人)
7/4(水) 文献6:レイナー・バンハム『環境としての建築』(1969)(堀江悟郎訳、鹿島出版会刊、1981年発行、入手困難)、(倉方塾 嶋田洋平)
7/18(水) 文献7:レム・コールハース錯乱のニューヨーク』(1978)(鈴木圭介訳、筑摩書房、1995年発行、1,575円)

特に近代の建築に関する知識、読解力、論理的思考力等を身につけるために、研究室の全員が7冊の本を読み、内容に関して討議します。いずれも古典と呼んで良い書籍で、1冊(『環境としての建築』)を除き、現在でも容易に入手できるものを選びました。
また、全体として、

アカデミーに抗した、生き生きとした中世主義(文献1)
外在的な要因による批評を退けて、中世主義に反駁、ルネサンス建築を再評価(文献2)
様式主義からの脱却を必然的・単線的に整理した、近代建築史観の古典(文献3)
生活者の知覚を出発点に、単体の建物とは異なる都市デザインの原理を提出(文献4)
大都市という固有の原理を解読し、建築界の都市計画の誤りを糾弾(文献5)
建築を環境装置として捉え、古典的な近代建築史観の偏狭さを解放(文献6)
建築家ではなく都市を主役として、ありふれたものの集積から物語を代筆(文献7)

といったように、19世紀半ばの中世主義から、21世紀の現在までの流れが、否定の連続として描けるように構成しています。
「否定」という言葉が強ければ「乗り越え」でも良いですが、いずれにしても、論理的な対抗こそが、世界を広くし、時代を進展させていることが、分かるのではないでしょうか?
そのことを理解するためには、どうしても歴史的な関連知識と、読解力と、論理的思考力が無くてはならず、それはいずれも、建築を学ぶ大学生・大学院生に今も必要なものと信じています。

2週間に1冊を精読することは楽ではありませんが、結果的に効率が良いやり方ですので、ついてきてください。入手可能な6冊をすべて購入して合計2万円しませんから、内容に比べて非常に安価です。

具体的に90分のゼミの時間配分は、下記のようにします。

60分間 内容発表(基本的に担当者各人が10分発表+内容の質疑応答が5分)×4人
30分間 内容に関する討議

最初の60分で内容発表を行います。1冊を基本的に4人の担当チームが受け持ち、発表します。
参加するゼミ生各人が1冊すべてを読んできていることが前提ですので、前半の内容発表は、内容を改めてスピード感をもって思い出すことと、後半の討議につながる視点を提出することの2点を要点とします。各人A4で2〜4枚程度のレジュメを作成してください。レジュメだけを見て本の内容が理解できるレベルのものは、必要としません。もっと簡単で、先の2つの要点に即したものを求めます。
4人がどこを分担するかは、チームの年長者(M2、M1)が交通整理して決めてください。各人のレジュメのフォーマットはさほど統一する必要はありませんが、各人の発表内容に対するすりあわせは、ゼミ発表前に行っておいてください。

後半の30分で内容に関する討議を行います。質疑応答は前半部で行っていますので、実質的な議論に時間を費やします。もちろん、読解対象以外の事象との接続も歓迎します。
できるだけ高いレベルの議論を行って、参加者全員が、読んだかいのある、多くの実りを持ち帰れるようにしましょう。


倉方俊輔